自社でシステムを検討する

 開業に向け、「自社でシステム構成を検討したい」との相談がありました。すべて任せてもらえば提案するというベンダがいるようですが、不安なので、自分で基礎から勉強しているとのことでした。
 今回は、このような状況を整理してみます。

システムで悩んでいる人のイメージ

1.システム検討の考え方と要件定義

 開業時に関わらず、自社に合った最適な情報システムを構築するには相応の検討が必要です。実際のシステム構築ではITベンダに依頼する部分が多いのが通常ですが、その内容に合意するまでは企業側の責任で行うのが原則です。
 構築するシステムにオリジナルの要素が含まれる場合、企業とベンダでどういうシステムを構築するのかを書面で定義・整合するものが「要件定義書」です。システム構築を依頼して早い段階で、企業とベンダが協力して作成します。
 その際、検討の観点で最も重要な観点は利用したい機能、つまり要求機能です。業務のあり方に大きく依存するので、情報そのものは企業が保有しています。
 もう1つの観点は、技術動向や製品動向に依存するIT技術の観点です。技術動向やベースとなる製品に大きく依存するため、情報格差が大きすぎると企業は受け入れるしかなくなります。冒頭の相談者はこれを懸念しており、それが顕在化したケースは数多く見てきました。

要件定義書へのアプローチ

2. 要件の検討・定義

(1)必要な知識の習得

 相談者の方は、技術的な基礎知識を理解するために下表の4分野の技術書を購入し、ポストイットを貼りながら勉強していました。つまり、IT技術の観点から最適解を探すアプローチです(下表)。

分野説明
サーバ業務用システムが動作しているコンピュータ
ネットワークシステムと端末などを接続する機器・回線
クラウドインターネット上で提供されているITサービス
セキュリティ不正アクセスや情報漏洩を防ぐ観点
IT関連技術書の例

 これらの本は「~の基本」というタイトルでしたが、エンジニアにとっての基本であり、一般の方が短期間に読むには難しい内容でした。
 技術者として駆け出しの頃を思い出しますが、これらを理解するには少なくとも何カ月もかけて理解し、情報処理技術者試験の過去問題とその解説で理解を深めたものです。システムベンダのエンジニアたちも、そうして得たスキルをもって設計しますので相応の費用が発生するのは妥当性があります。
 従って、経験もなく1か月程度で理解しようとしても無理がありますが、ご自身で基礎から理解しようとする姿勢は立派です。

(2) 要求機能のリストアップ

 企業側がベンダに提供すべき情報は、利用したい機能に関する情報です。それをベンダの技術者にも分かり易いように伝えるには、純粋なIT技術の要素はさておき、誰がどのタイミングで操作し、どのような情報を、どの機器を保存するのかを漏れなく記載することです。つまり、要求機能からのアプローチです。
 一般的には、業務フロー図などを記載するのが効率的ですが、取りかかりとして、先ずは日本語で要求機能をリストアップするのが良いでしょう。その際、導入する機器の一覧や社内・クラウドを分離したネットワーク構成図の作成も勧めます。それを見ながら、必要な機能を日本語で列挙してゆくことになります。
 要求機能がまとまれば、それをベンダに提示することになりますが、後日提案されたシステムの構成で要求機能が満たされているかを1つ1つ確認することで納得感が得られるはずです。構築後に「この作業はシステムでサポートされていない」という齟齬が発生することもある程度防ぐことができます。

(3) ベンダとの整合

 機器ベンダは、構築に必要な情報を求めて問い合わせがあると思います。それには、技術的な事項を前提としたものも想定されますが、必要に応じて、前述したような技術書に照らして確認することになります。
 もし、情報システム部門の方でしたら、ベンダの対応は主業務の1つですので、これでは収まりません。前述した技術書の内容の多くは知識として持っているべきで、必要な機能を要件定義書として正しく言語化して、ベンダとの齟齬が無いように努めなければなりません。多くの企業ではそれが出来ず、システムが肥大化したり、使いにくいシステムを構築したりする事態に陥っているように思えます。

3.まとめ

 今回は、IT技術に詳しくない方が、自社のシステムを検討する状況について述べました。ベンダの提案に対し、納得感をもって発注することはとても重要であり、「ITに詳しくないから」と安易に諦めてしまうのは適切な姿勢ではありません。

 ご興味のある方は、こちらからお願いします。

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