2023年版「中小企業白書」

 毎年、中小企業庁から発行される「中小企業白書」、2023年版は事業承継・地域課題解決・経営共通基盤について述べられています。その中から、アンケート調査を基にした「中小企業のデジタル化推進に向けた取組」について議論します。
※図は、2023年度版中小企業白書より引用しています。

1.デジタル化進展のきっかけと背景

(1)デジタル化の段階

 デジタル化の取組段階は下図のように定義し、IT化機運の高まりを受け、ここ数年で増加しています。まず、皆さんの企業はどの段階でしょうか。

デジタル化の取組段階

(2)デジタル化に取り組んだきっかけ

 本文では、デジタル化に取り組んだきっかけとして、取引先からの要請・社内からの要望などが挙げられており、必要に応じて対応している様子が窺えます。デジタル化により情報のやりとりで誤りが減り事務工数を削減できるケースは多いはずですが、従業員21人以上の企業で社内からの要望が多いのは理解できます。

従業員別に見た、デジタル化に取り組んだきっかけ

(3)デジタル化が進展しない理由

 次に、デジタル化が進展しない理由として、費用負担が大きい・推進できる人材がいない・取り組む時間がないなどが挙げられています。これらは、根本的な理由ではないように思えます。予算は事業計画として確保すべきですし、人材は必要なスキルを定義して確保・育成してゆくしかありません。取り組む時間がないのは、デジタル化が進んでいないから余裕が生まれないのかも知れませんが、計画的に進めるべきでしょう。

従業員別に見た、デジタル化の取り組み段階が進展しない要因

2.デジタル化推進に向けた戦略とデジタル人材

(1)デジタル化を推進している部署

 実際にデジタル化を推進している部署については、経営者が積極的に関与しているケースが多いようです。事業部門やIT部門では、日々の業務に追われ、現状の業務プロセスを変更して混乱したくない状況は容易に想像できます。しかし、経営者がリーダシップを採りつつも、業務改革と合わせてデジタル化を詳細に進めるには他部署の作業は必要でしょう。言うまでもありませんが、すべてをベンダに委託することは避けるべきです。

デジタル化を推進している部署

(2)デジタル化に向けた戦略的な取り組み

 段階を踏んだ戦略的取り組みの例として、経産省「DX推進指標」から下記が引用されています。「ビジョン・目標の設定」「業務の棚卸し」「評価指標の設定」「費用対効果の検討」「予算の確保」、どれも欠かせない内容で、企業支援でも議論している項目ですが、みなさんの企業では実施されていますでしょうか。

デジタル化に向けた戦略的な取り組み

(3)デジタル人材の確保・育成に向けた取組

 中小企業のデジタル化が進展していない要因のうち「デジタル化を推進できる人材がいない」が上位に挙がっていましたが、(IPA)「DX白書」では、デジタル人材を「デジタル化の戦略を推進する人材」と「デジタル化の技術を担う人材」の二つに分けて示されています。
 すべてを社内で対応することは難しいかも知れませんが、自社の戦略に関わることです。中長期で確保・育成することを想定して考えるべき課題です。

デジタル人材の確保・育成に向けた取組

3.デジタル化推進に向けた支援機関の活用

 デジタル化の取り組みに関する支援機関への相談内容は、「ITツールの選定」「ITツール導入時の支援」など多岐に及んでいます。一般に、経営戦略や業務の見直しを伴うものは、ITツールを導入して簡単に課題が解決するとは限りません。いずれにしろ、デジタル化を大きく進展させるためには、経営者は真摯に向き合う必要があります。

デジタル化に関する支援機関への相談内容

4.まとめ

 今回は、「中小企業白書2023」のうち、デジタル化に関する記述について記しました。人材などのリソースが不足し、思うように取り組みが進んでいない様子が読み取れるのですが、避けては通れない道でもあります。
 つまり、これらを実行できる人材を確保・育成することに、経営者は真摯に向き合う必要があります。

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