「中小企業の経営支援」~公的支援と民間契約

 中小企業が課題を解決するため外部の経営支援を受けることがありますが、商工会議所などの公的機関が行っているもの、独立した事業者が行っているものと様々です。
 支援を受けるにしても事業者にとって何が適切か、迷うところもあるのではないでしょうか。
 今回は、中小企業支援についてまとめます。

ディスカッションの様子

1.中小企業支援の概要

(1)支援を受ける契機

 自社の経営を改善するため、第三者の助言を受けたい場合があります。例えば、業績悪化を食い止めるための経営計画を策定する、生産性向上のためにITの活用を検討するなど、経験ある専門家の意見や助言は有効です。
 そうした場合、先ず、公的な支援をお勧めします。後で述べますが、専門家が電話や面談に応じてもらえることがあります。
 更に踏み込んで、特殊なスキルが必要な作業・成果物を求めるのであれば、専門家と個別に契約して課題解決に臨むことも考えられます。
 ここで、誤解してはいけないのは、あくまで支援ですので、実際に解決に向けて主体的に検討・実施するのは企業であるということです。

(2) 支援する方

 経営に関わる事項について専門家の多くは、特定分野について深い知識と経験を有しています。
 例えば、経営に関する国家資格である中小企業診断士は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」について基礎知識を修得した後、実際に中小企業支援を行う研修を経て、当該資格が与えられます。そして、独立開業していれば、多くの中小企業の課題を解決する経験が蓄積されています。
 もちろん、専門分野や経験は支援者によって大きく異なりますので、出来れば、公開されているプロフィールなどで確認しておくことをお勧めします。

2. 公的な経営支援

(1) 実施する機関

 国・都道府県・市区町村などが、様々な形態で経営相談・セミナ開催・専門家派遣などを行っています(下表)。
 都道府県や市区町村では、その区域の事業者が対象で、商工会議所・商工会も地区が割り当てられています。国(中小機構)が運営している支援では、ある程度、事業規模が大きいものが多いように思えます。

分類期間
国(中小機構)全国11本部、
中小企業大学校(全国9拠点)、
よろず支援拠点(47都道府県に設置)
都道府県中小企業振興公社・産業振興センターなど
市区町村役所の経済振興課など
その他地域の商工会議所・商工会
公的支援の実施機関

(2) 支援内容

 経営に関わるものが対象ですので、経営戦略から販路開拓・マーケティングなどテーマは多岐に渡ります。支援方法は、経営相談や専門家派遣による助言、補助金・助成金による資金調達支援、研修・セミナ開催などがあります。
 経営相談の多くは、短時間(例えば45分)で、会社や事業の概要、課題などを説明し、解決方法について助言を受けます。「そんな短時間でまともな助言が得られる訳がない」と思われるかも知れませんが、前述した知識と経験に基づいて、必要事項を要領よく聞き出し、可能な限り適切に助言するのが経営相談員の役割です。
 相談で解決しない課題については、専門家派遣を利用する場合があります。多くは、派遣回数や期間などを限定して、専門家が現地に訪問し、課題解決に向けて助言を受けます。ここで、専門家は公的機関から委託されて対応しますので、多くの場合、派遣時間内の対応に限られます。従って、周辺調査や作業を請け負うことは基本的にありません。
 なお、筆者は、ある公的機関で相談窓口と専門家派遣を担当しています。

(3) 補助金・助成金

 あるテーマについて費用の一部を補助するのが補助金・助成金です。実施する機関は、国・都道府県・市区町村など、テーマも研究開発・設備投資・販路開拓など、その種類は多種多様です。
 多くは申請要件が細かく定められており、募集要項等をよく確認し、理に適った事業計画を策定して申請します。つまり、相応の準備が必要で、”給付金”と異なり要件を満たすだけでは採択されません。

3.独立した事業者による経営支援

 一方、独立した事業者が支援を請け負う場合もあります。この場合の支援者は、独立したコンサルティング会社や、筆者のような士業の個人事務所などで、支援者の得意分野についてより深く支援を得ることが可能です。
 内容と費用は契約によります。例えば、IT活用の支援では、業務プロセス設計から構築・運用・保守までの段階がありますが、その設計作業の一部を委託するのか、また社内人材との役割分担などを契約に定めます。顧問契約であれば、財務分析を含めて経営状況を中長期の視点で把握しつつ、適切な形態を模索することもあります。
 筆者であれば、ITに関する人材の確保・育成システムの構築・運営に関する支援経営計画策定支援などを行っています。
 もちろん、相応のスキル人材を一定時間確保する程度の費用が発生しますが、社内で人材の確保・育成を図り、経営環境について適切に判断することから妥当な額と考えられる場合に限って契約することになります。

4.まとめ

 今回は、中小企業支援について整理しました。中小企業で不足するリソースを補う方法として支援を得ることは課題解決に向けた選択肢の1つであり、その内容は様々です。
 ただ、公的支援にせよ、独立した事業者による支援にせよ、企業が主体的に取り組むことが原則ですので、はき違えないようにする必要はあります。

 ご興味のある方は、こちらからお願いします。

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