ノーコードアプリ作りました

 所属する団体への貢献作業として、ノーコードツールを利用したアプリを作成しました。
 汎用クラウドサービスやローコード・ノーコードツールの普及により、社内のデジタル化整備の敷居が低くなったとセミナ等でお話していますが、実際にどれだけの作業が必要なのか、体験談を紹介します。

1.作成するアプリ

 今回作成するアプリは、代表的なクラウド版ノーコードツールを使ったアプリで、以下のようなものでした。

(1)要求機能と効果

 主な機能は、以下の3点です。
  ・紙・メールで提出していた書類をPDFアップロードで行う
  ・提出書類は、査閲・承認を経て事務処理にまわす。
 狙った効果は、デジタル化推進の全体方針に沿って、①ペーパレスによる生産性向上、②PPAT廃止によるセキュリティ向上です。

(2)依頼内容のヒアリング

 アプリ開発依頼に関する打ち合わせは、30分程度のオンラインで行われました。
 本業務の位置付けを示す図(他資料からの抜粋)、提出者・査閲・承認を行う者・事務処理担当の説明、納期は今月以内、操作マニュアルが必要、などが示されました。
 担当者は、実質的に私のみ。依頼者はPDFファイルのアップロードのみを想定するなら数日程度と考えていたものと想像されますが、操作マニュアルの作成、運用サポートを考えると相応の工数が必要と見られました。

2.アプリ開発作業

 実際に行った作業は下表の通りです。

作業項目作業内容
1要件定義打合せでヒアリングした内容から、機能要件を漏れなく整理します
2仕様化ノーコードツールの機能に沿った表現として、仕様にまとめます
3設定仮の動作環境を作成し、パラメータを設定します
4検証試験項目をリストアップし、必要な動作を確認します。
5マニュアル作成実行イメージを切り貼りして、操作マニュアルを策定します
6本番環境設定実際の運用環境に設定してゆきます
行った作業

(1)要件定義

 打ち合わせでヒアリングした内容は、主要な機能のみが提示されているのが通常ですので、開発上の機能要件を加えて整理する必要があります。加えた機能には、以下のようなものがあります。
 ・提出者同士の提出書類閲覧を避けるため、しかるべき閲覧制限を設ける
 ・査閲・承認プロセスは、順を追って各担当に処理を促すための通知を行う
 ・関係者全員が毎日ログインしていないと想定し、通知はメール配信も行う。

(2)仕様化

 要件を実現するため、ノーコードツールの機能に沿った表現としてまとめます。
 汎用クラウドサービスやノーコードツールは高機能になっていますが、その分だけ、設定が増加・複雑化しています。
 今回のノーコードツールでは、機能ごとの解説(各数10ページ)がいくつもリリースされており、うち、3つを参照しました。
 その上で、パラメータを設定可能なレベルまで落し込んで仕様をまとめます。採用しなかった方式の検討を含め、PPTで30ページくらいになりました。

(3)設定

 ノーコードツールに仮の環境を作成し、パラメータを設定します。
 今回は、本番環境に仮のユーザアカウントを設定することはできないため、異なるシステムアカウントを用意し、ユーザアカウントごとの設定を行い、動作確認しました。
 ごく簡易な機能であれば、本番環境で動作確認する程度で良いかも知れませんが、仕様をまとめた結果、仮環境を用意すべきと判断しました。

(4)検証

 試験項目をリストアップし、原則として全て設定した後、一通りの動作を確認します。
 ブラウザ上で、提出者・査閲者・承認者・事務処理担当・管理者を割り当てる必要があり、PC1台で2つのブラウザを利用するとして3台のPCを並べて、複数のメール受信環境と合わせて操作しました。
 スクラッチのソフトウェア開発では、単体・結合・総合と順を追って試験しますが、ノーコードツールでは動作が限定されていますので、主な機能に絞って、想定していない動作(いわゆるエラールート)までは確認しませんでした。

(5)マニュアル策定

 操作する方々のITリテラシを考え、提出者・査閲者・承認者・事務処理担当ごとに、画面イメージを貼り付けて記載します。説明や注意事項もあるため、数10ページになりました。

(6)本番環境作成

 検証環境の設定パラメータを本番環境に再現します。
 パラメータはいくつもあるため、重複がないなど、よく整理しておくことが大切で、本番環境への設定は慎重に行い、何度も目視確認します。
 本来、十分に動作確認したいところですが、各担当者に通知されてしまうため一部に止めています。

3.運用開始後の問題と対応

 いざ、運用を開始すると、いろいろなことが発生します。
 今回は以下のようなことがすでに発生しています。

(1)要件漏れ

 査閲・承認のプロセスの前に、事前に事務担当者による形式チェックが行われていることが分かりました。ヒアリングした際にはなかったプロセスで、仕様外ですが、運用上、必要とのことです。
 スクラッチ開発のシステム開発ベンダとしては追加の費用を要求するところですが、そもそも無償のノーコードアプリ作成作業なので、対応することにしました。
 作業手順は、前述した全工程で修正作業が発生し、工数は相応にかかりました。

(2)関係者の反発など

 業務手順の変更は多くの場合、現場の抵抗があります。
 今回も、紙・メールで提出していた書類をPDFアップロードにて行う際の、理に適わない否定的な意見などが寄せられているようです。また、ITリテラシが十分でないご高齢の方々もいらして、事務担当者が代行して操作する暫定処置が採られるそうです。

4.まとめ

 依頼者は、「ノーコードツールを使ったアプリ作成」のため短期間の作業で済むと考えていたかも知れませんが、もちろんスクラッチ開発より大きく削減できるとはいえ、相応の作業は必要です。
 以前にも示しましたように、中小企業でリソースが限られていれば、システム担当者に負荷が集中する傾向があり、諸外国のIT技術者に比べて待遇が良くない事情から人材流出のリスクも発生します。
 そのため、経営者やマネジメント層は、「業務システム開発は担当者に任せておけば良い」とは決して言えないのです。

ご興味のある方は、こちらからお願いします。

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