情シスは、ゼネラリストorスペシャリスト?
企業の情報システム担当者は、管理部門のゼネラリストとして捉えるべきか、専門的なスペシャリストとして捉えるべきか。
経営者や人事部門にとっては判断に迷うところかも知れませんが、そう言っていられない状況が迫りつつあるとも考えられます。
今回は、情報システム部門のあり方について考えます。
1.現在の状況
実態として、情報システム部門(以下、情シス)は管理部門の1つ、すなわち担当者はゼネラリストとして扱われているケースが多いように思えます。
理由は以下のような状況が考えられます。
(1) 環境分析と経営戦略の策定
情シスの役割を整理すると下図のようになります。
テクノロジ・マネジメント・ストラテジのスキルをベースに、新技術の知識を補足しつつ、情報システム・情報ネットワークなどの構築・運用を行い、各部門にITサービスを提供します。
すなわち、情シス担当者は、本来の業務を実施するのは相応の技術を身に付け、爆速で進化する技術調査を継続的に行う必要があります。
一方、下図は、基幹システムのような規模でソフトウェア投資を行う場合の構築方法について、自社開発・受託開発(カスタマイズなど)・パッケージ(汎用品のまま利用)の割合を日米で比較したものです。
米国企業は自社開発を含め概ね1/3ずつなのに対し、日本の企業はほとんど外注しています。その結果、情シス担当者はスキルを磨いたり、経験を積んだりする機会が損なわれ、人材が育たたず、外注に依存する状況が常態化します。
これが、日本では優秀なIT産業が育たず、これが膨大なデジタル赤字が恒常化している要因の1つになっています。
(2) キャリアの積み方
国内企業の多く、特に大企業では、新卒者を採用・育成して必要な人材を確保し、人事異動を通じて、社内で様々な経験を積ませ、ゼネラリストとして育成する傾向があります。もちろん、社内の状況を理解し、様々な経験をすることはとても有意義ですが、研究職や技術職のような職種では専門職では必ずしも有効ではありません。
では、情シス担当者はどちらが適するでしょうか。
前述したように、システム構築の多くを外注するのであれば、ITシステムの構築・運用の多くを外注先に委託することで、担当者をゼネラリストとして扱うことで十分だったのかも知れません。
2. 来るべき環境変化への対応
(1) デジタル化の要求
業務部門の人手不足を背景とした生産性向上の要求に応えるために、IT活用を検討する状況が増えています。また、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革(すなわち、本来のDX)までを視野に入れたIT活用の検討が一般的になりつつあります。
システムを外注する場合は、自社のビジネス状況や経営方針などを正確に理解してシステムを構築してもらえることは通常ありませんが、その部分はゼネラリストの担当者で可能でしょうか。
(2) 技術の進展によるインパクト
昨今のノーコード・ローコードによる開発方法やSaaSの利用など、専用アプリケーションのスクラッチ開発と比べて、導入の敷居が低い手法が一般化してきました。しかし、これらの活用は外注ではなく自社で対応することが基本ですので、ITツールの選定から業務プロセス分析、導入・運用作業は全て自社で完結させることになります。
また、生成AIの普及に代表されるように、AI技術が様々な産業に大きなインパクトを与える可能性があります。産業用ロボットや自動運転といった直接的な領域はもとより、様々な分野で情報分析や資料作成などで大幅な効率化が進む可能性があります。自社のビジネスモデルが大きく変化し、市場がそちらに移ってしまってから新たに参入しようときにはすでに激しい競争環境にあったなどという事態は避けねばなりません。
これらの状況を踏まえて、中小企業であっても、中長期の課題として自社の体制を整えておくべき状況は少なくないと考えています。その場合、情シス担当者は、スペシャリストとして位置付ける必要はないでしょうか。
3.まとめ
多くの国内企業では、これまでのように外注に依存してばかりでは、本来の情シスの役割を十分に果たすことは難しくなってきます。そのためには、短期間では難しいかも知れませんが、IT人材の確保・育成に向き合い、中長期の経営課題として対応してゆくしかないと考えています。
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