AIによる事業へのインパクト
AIの進歩は止まることを知らず、短い期間でビジネス環境が変わる勢いです。
今回は、ビジネスへの影響を考えます。
1.AIの急速な進化
(1) 生成AIの状況
何と言っても生成AIの成長には目を見張るものがあります。
大規模言語モデル(LLM)をベースとした文章の解釈・生成が可能になったことで、インターネット上の膨大な情報を利用することが可能になり、言語によるユーザインターフェース(UI)を実現しました。
それが1年で、モデルが大規模化し精度が大幅に向上しました。モデルで扱っているパラメータ数は、すでに数1,000億となっており、大量のGPUを搭載した特殊なサーバで学習されています。
UIの範囲も広がっています。音声の認識・生成も可能になり、動画の解釈も可能になっています。OpenAI社ChatGPT-4oのデモンストレーション動画には驚きましたが、リアルタイムで会話ができるレベルになっています。
(2) 生成AIの進化
昨年から今年初めまでで、生成AIのチャット形式によるサービスを展開する代表的な企業が数社に落ち着き、進化の勢いが鈍化するという考えが発表されました(ガートナージャパン株式会社「生成AIのハイプ・サイクル」)。
しかし、それに陥るとは限らず、大きな技術革新により更に成長を続ける可能性も示されています。
技術革新の1つは、「推論」(論理的思考の学習)です。これまでの生成AIは、大量の文章から回答に相応しい文章を確率的に選択して生成していましたのでハルシネーション(誤り)も相応に発生していました。推論では、回答を導き出す法則を見つけ出し、それを学習するため、公式を覚えるかのように精度が向上します。これはすでに一部の生成AIで実装され始めています。
もう1つは、エージェントです。私の理解では「設定された環境や受け取ったデータに基づいて、特定の目標を達成するための行動を自律的にAIモデルや条件を設定」できる仕組みです。例えば、自動運転の複雑な環境をナビゲートするため、必要な意思決定をリアルタイムに行う仕組みがこれにあたります。
これらの応用範囲は相当広いと思われ、それを加味するとハイプ・サイクルに入る間もなく急速な成長を続け、AGI(汎用人工知能)の実現も視野に入ってくるとも言われています。
2. ビジネスに対して考えられる影響
下表※はAIの活用事例の一部ですが、AIは多方面でビジネスを変革しています。
AIの普及により、ビジネスにどのように影響するのでしょう。
※一般社団法人日本ディープラーニング協会「深層学習教科書 ディープラーニング G検定公式テキスト 第3版」より引用編集
(1) 直接のインパクト
これまで行ってきたビジネスモデルがAIによって置き換わってしまうことが考えられます。
生成AIはすでに多言語対応でリアルタイムAPIもリリースされ始めました。つまり、通訳や外国人向け案内など翻訳に関わる業務は、スマホ内臓のAIに置き換わってゆく可能性があります。ちょうど、コンパクトデジタルカメラの市場がスマホの内蔵カメラによって大きく縮小したことに似ています。
(2) 間接的なインパクト
現在行っているビジネスがAIにより大幅に効率化できるケースが考えられます。
米国で最もAIが活用されている領域は”カスタマーサポート”ですが、日本国内のインバウンド需要に対応したビジネスは大幅に効率化されることは想像に難しくないでしょう。
生成AIは応用範囲が広く、文書の要約や形式変換、プログラムの生成などは得意ですので、AIを活用した業務ソフトも今後多くリリースされると考えられます。例えば、基本的なプログラミングを行い、デバッグもその場で可能な便利なツールもリリースされており、相当な効率化が実現されています。
(3) 環境としてのインパクト
業務で利用しているサービスが気付かぬうちにAIで便利になっていることは容易に考えられます。
音声アシスタントや家電製品の多くにAIが活用され、機能や利便性が向上しています。もちろん、生成AIのような大規模なモデルではありませんが、センサなどと組合せて効果的に性能を向上させています。
自動運転が普及すれば、物流環境も大幅に改善することが期待できます。直接目につかない部分でも、ビジネス環境が変化してゆくと考えられます。
3.まとめ
生成AIの急成長が目立っていますが、それだけでなく、AIの普及はビジネスに少なからずインパクトを与える可能性があります。これまで私が助言してきた事項も、AIの観点を加えると変わってくるであろうことがいくつもあります。
場合によっては、自社の事業計画にもAIの視点を加えて策定する必要があることを認識すべきと考えています。
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