「DX白書2023」

 「DX白書2023」が、IPAから公開されました。
 IT化の遅れが指摘されている日本の状況が、米国と比較したデータが多く紹介されており、中小企業と接する機会の多い小職の肌感覚の意見と合わせて、ごく一部ですが紹介します。

 ※各図は本文から引用しています。

1. DXの取組状況

 ご存知の通り、企業におけるDXは、デジタル活用によりビジネスモデルまで変革するような広範囲な活動です。1章・2章には、DXの取組状況について記載されています。
 国内の取り組み状況は、大企業の4割、中小企業お1割強が取り組んでいます。売上規模が大きくなく業務改革レベルの事例として「RPAによるガス使用量把握実務の自動化」などが示されています。
 また、日本と米国の比較として、取組状況・成果で、中小企業を中心に大きく差が開いていることが示されています(下図)。

2.企業DXの戦略

 第3章には、企業のDXに対する戦略について述べられています。
 この中で、「新たな価値の創出」と「組織内の業務生産性向上や働き方の変革」を同時並行に進めることが重要とあり、4つの取り組みついて、成果の日米比較が示されています(下図)。

 また、「DXは、ニーズの不確実性が高く、技術の適用可能性もわからないといった状況下で推進することが求められ、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応していくことが必要である」とされ、その方法として、活用部門がより直接的に関わる「アジャイルの原則」の日米比較が示されています(下図)。DXは、情報システム部門が単独で進めるものではないことは再確認したいところです。

 更に、「ITに見識のある役員の割合」を見ても、大きく差が開いています。社内の情報システムを外注に任せる傾向の要因の1つと考えられ、デジタル化の推進に向けて中小企業経営者に問われる見識も変わってくることを認識すべきでしょう。

3.デジタル時代の人材

 第4章には、目指す人材像を定義し、確保獲得・キャリア形成学び・評価定着化を進め、企業文化・風土になってゆく流れが示されています。容易に進められるとの誤解を招きかねない広告も多い中、気軽に考えている中小企業経営者がいらっしゃいますが、決してそうではありません。DXを推進する人材の質・量とも日米差は大きいのですが、どのように人材育成方法は悩ましいところと思います。この日米差(下図)を見ても分かるように、DXに関する人材育成の機会が十分でない中小企業は多いと予想されます。
 システム導入作業を外注に委託する方法は、ある程度の質・量を補完することは可能ですが、ほとんどを依頼するようでは根本的な解決にはならないでしょう。また、最近では、中小企業向けにも育成プログラムも見受けられるようになってきましたので、活用は検討すべきでしょう。

4.DX実現に向けたITシステム開発手法と技術

 開発手法には、機能・品質と俊敏な構想・設計・開発・運用、臨機応変に軌道修正できる柔軟性などが求められることから、ITベンダに任せきりにするのは難しいと考えられます。
 第5章の「ITシステムの開発手法の活用状況(開発手法)」では、6つに分類して述べていますが、いずれも日米で大きく差が開いています(下図)。専用ハードウェアやプログラミングを必要としない環境により導入の敷居が大きく下がっている状況下で、中小企業も真摯に向き合い必要があるのではないでしょうか。

5.まとめ

 中小企業の生産性を向上させる典型的な方法の1つがデジタル化であり、それをビジネスモデルのレベルまで拡大するのがDXです。長期にわたりデジタル化にリソースを十分割り当ててこなかった中小企業は多いと考えられますが、IT技術の進展で敷居が低くなっている現在、経営戦略の一環として取り組むべき中小企業は多いのではないでしょうか。

当事務所では、DXに取り組む中小企業を支援しています。
ご興味のある方は、こちらからお願いします。

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