システム導入における自社の関与
「IT化を進めたいが、どうしたら良いか」という漠然としたご相談があります。
場合によっては基幹システムのようなものを考えていらっしゃる方もいますが、それには自社の主体的な関与が重要です。
今回は、複数の部門が操作する一定規模以上のシステムを構築する場合を考えます。
1.ベンダに任せる
どのように構築するか分からない場合、先ず、システムベンダに問い合わせたくなるところです。多くの場合、ベンダでは、自社製の汎用システムをベースにカスタマイズすることを想定して概算費用をもって詳細を詰めて商談に入ります。
(1)費用は妥当か
問い合わせた結果、概算で4,000万円の見積りが得られたとしましょう。これは”高い”でしょうか。
開発費用の多くは人件費です。基幹システムのような規模のソフトウェアを1年で開発するとすれば、その間、何人ものエンジニアがほぼ専任で担当することになります。
エンジニアは顧客の業務プロセスを理解するために、システムの操作を行うプロセスとその情報要素を全て洗い出し、フロー図などにまとめ、仕様に落とし込み、プログラミングして開発してゆきます。この開発規模になると、開発スケジュールを維持しつつ、品質と人員を管理して開発を達成するのは相当大変で、いわゆるプロジェクトマネジメントが必須になります。
このように考えると、見積り額の妥当性は一概に”高い”とは言えないのではないでしょうか。
(2) ベンダに依頼することのメリット・デメリット
システム開発に熟知したベンダは、企業の利用したい機能をヒアリングします。ここで、企業側は考えられる業務プロセスを説明するのですが、システムを用いていない現行のプロセスを説明しがちで、加えて「こういう機能が欲しい」と要望します。ベンダは、それを受けて開発を計画・実施します。
企業としては、システム開発のスキル人材を抱えていなくとも、システムを導入しやすいのが最大のメリットです。
しかし、あまりにベンダに任せていると、システムによって業務プロセスを改善できることに考えが至らず、返って必要性が問われかねない機能を盛り込んでしまうことになります。結果として、開発コストが嵩み、保守費を中心に運用コストが増加してしまいます。挙句の果てには、使い勝手が良くないシステムを利用し続け、長期で当該ベンダと付き合うことになります。
2.自社で主導して開発する
一方、自社で業務プロセスを定義し、仕様化まで十分関与する場合を考えます。
(1) 業務プロセスの見直し
業務プロセスを熟知しているのは自社です。それをフロー図にまとめ、システムへの要求機能に落とし込んでいくのが定石ですが、ここまではソフトウェア開発の深い知識は必要ありません。業務の流れが効率的になるように、業務プロセスを見直すことができるのはこの機会しかありませんが、これは、むしろ自社の方がやりやすいはずです。
その上で、システムが実現すべき機能を必要最低限になるよう要求機能を定義します。
(2)仕様化と開発
ソフトウェア開発の深い知識が必要となるのは、そこから先の仕様化やプログラミングの段階ですが、この段階になると外部の企業に協力してもらう必要があるかも知れません。
ただ、業務プロセスを十分理解されていない場合もあるため、仕様化の段階では齟齬が発生しないよう、よく確認しておく必要があります。
こうして、より効果的で無駄の無いシステム開発を行うことが可能になり、総開発コストを抑えることができます。システムの機能がシンプルであれば、運用コスト(工数・費用)も抑えられますし、仕様を理解していれば機能追加やトラブルがあった際にも適切に対応できます。
3.まとめ
支援してきた企業の中には、ベンダ任せでシステムを構築し、ベンダに依存せざるを得ない状況下で運用に苦労しているケースがありました。こうしたことは実際に多いと考えられます。
解決策の1つは、自社でシステム開発に関与する度合いを高めることですが、それには中長期の課題として、そうしたスキル人材を確保・育成する必要があります。
デジタル化による生産性向上を図りたいのであれば、中小企業経営者には、この状況に向き合えるかどうかがを問われると考えています。
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