システムは、本当に外注すべきですか

 国内企業の「デジタル化の遅れ」が指摘され、大企業の組織的なリスキリング活動が報じられていますが、中小企業における業務ソフト開発・調達について考えます。

1.日米のソフトウェア投資内訳からわかること

 下図は、米国と日本におけるソフトウェア投資の内訳です。
 米国のソフトウェア投資は、パッケージソフト(規格品)・受託開発(ベンダに開発を委託)・自社開発に大まかに3等分されていますが、日本のそれは受託開発がほとんどで自社開発がありません。すなわち、日本の特徴として、社内にソフト開発ができる人材を配置せず、自社の業務フローに合わせてソフトウェアベンダにカスタマイズ開発を委託する傾向が非常に強いということです。
 そのため、社内に当該人材を配置する必要がない一方で、業務プロセス見直しの機会を失いかねず、非効率な業務プロセスのまま、不必要な機能開発が行われる可能性が高まり、結果として開発費用・運用費用が嵩んでしまい、場合によっては事業停滞の要因になりかねません。
 この状況は、ソフトウェアベンダにとっても、企業ごとにカスタマイズ開発する工数が必要で、開発人材の不足が顕著になってしまい、より価値のある機能開発が進まないことになりまねません。もし、そのようになってしまっていたら、何と、非効率な産業構造になってしまっているのでしょうか。

左:日本のソフトウェア投資内訳
右:米国のソフトウェア投資内訳
(出典)(出典)令和元年版情報通信白書

2.自社調達への環境変化

 「業務システムを自社で開発・調達することは容易ではない」と考えがちです。
 もちろん規模に依りますが、10年前とは環境が異なっています。
 1つはクラウドサービスの普及で、インターネット経由で標準的な便利なサービスが多くリリースされるようになり、中小企業でも活用しやすくなりました。会計や販売管理のような定型の業務であれば、サーバを用意せずに、安価で迅速に活用できるものがあれば効果的です。
 2つ目は、ノーコードツール等の自社開発しやすいソフトウェアの一般化です。大規模なソフトウェア開発はできませんが、プログラミングせずに、部門レベルで特定の業務プロセスを迅速に効率化できるとすれば、明らかに効果的な方法です。
 一方で、基幹システムのような規模の大きいソフトウェア開発を委託するベンダででは、デジタル化を進める流れの中で開発者不足が進んでおり、個々のサービス品質低下が懸念されます。実際に、社内の情報システムをERPのカスタマイズにより集約して管理コストを大幅に削減できたのですが、保守を依頼するベンダの対応が悪くなり、困っている中小企業の相談を受けたことがあります。

3.ノーコードツールで自社開発した例

 ある小売店で、「Microsoft Access」をベースにした業務管理システムを外部に開発を委託して運用していたのですが、システムを更新するにあたり、ソフトウェア開発ベンダに委託するか、ノーコードツールで自社開発するかを検討し、後者を選択しました。
 プログラミングが不要なので、ツールに付随する詳しい解説・サンプルデータを参照することで、社内で各種設定を行って必要な管理機能を実現するのが基本です。必要なITスキルとしては、Excelの関数+α程度のスキルで実現可能と判断しました。開発に必要な工数としては、少なくとも数か月に渡って各50時間程度でしょうか。その結果、外注する場合と比べて、社内人件費を含めて費用は1/5、今後、想定される業務効率化への工夫が柔軟に行えることが期待できます。

4.まとめ

 IT人材が足りないのは、中小企業もITベンダも同じです。
 業務システムをどのように開発・運用するのが適切なのかは自社の検討課題で、もちろん規模にも寄りますが、どれだけ検討に主体的に関与できるかが、適切なシステムを構築できるかのキーポイントになります。
 その意味でも、中長期的視点でIT人材を確保・育成することは、中小企業にとっても極めて大きな課題です。

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