DXの流れと対策

 話題になっている「DX(Digital Transformation)」、従来のIT活用との違いは何なのでしょうか。
ここでは、DXと自社の対応への考え方を考えます。

1.DXと各所の状況

(1)DXの定義
 経済産業省「DX推進ガイドライン」(2018年12月)によれば、「企業やビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品・サービスモデルを変革すると共に、業務プロセス、組織・制度、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とあります。 
 部分的なIT化のみならず、業務の流れ、それに関わる組織や制度、企業文化までを視野に入れ、中長期に渡って計画的に改革を図ることと捉えることができます。

(2)コロナ禍で明らかになった「IT化の遅れ」
 「定額給付金の支給」は、欧米の先進国に比べて支給まで何倍もの時間を要し、「国家行政のIT化遅れ」を明確に示す象徴的な出来事でした。
 市区の中小企業支援手続きを手伝って分かりましたが、地方自治体のIT活用もかなり遅れている印象です。各種申請は紙・押印が原則で、職員さんの席を見れば、「IT化による生産性向上」が十分でないことは明らかでした。
 一方、企業はどうでしょうか。大企業の中には、以前からペーパーレスが進んでいて、座席がフリーアドレス化され、在宅勤務を比較的容易に実現できた例はいくつもあります。しかし、中小企業の多くは十分でないかも知れません。

国家行政持続化給付金等の手続き遅延
遠隔医療、遠隔授業の制度化遅延
地方行政定額給付金等の処理遅延
各種電子申請手続きの未対応
中小企業業務書類が多く、テレワークに移行できない
従業員のITリテラシが追い付かない

2.DX検討の方向性

 では、「IT化の遅れ」の状況から脱却してDXを推進するためには、どのような観点から進めていくべきでしょうか。
 東京都の例を参考に、どのように検討すべきかを考えます。

(1)東京都の”5レス”方針
 東京都では、先般、「DX推進に向けた5つのレス徹底方針」を発表し、「ペーパーレス」「はんこレス」「キャッシュレス」「タッチレス」「FAXレス」について、全庁を挙げて取り組むこととしています。
 一見、どんな効果が得られるのかと思われるかもしれませんが、それは事業や部署によって様々ですし、情報がデータ化されれば分析・活用できますので、DXを進める上で、分かり易く、重要な要素であることは明らかです。

(2)事業のDX評価
 自社のDXを検討するにあたり、先ず、現況を整理してみましょう。
 例えば、”5レス”の視点で評価すれば、下表のような状況でしょうか。

項目状況
ペーパレス伝票類は紙で管理している
FAXレス注文書のほとんどはFAX
はんこレス見積書・発注書・社内稟議などは押印
キャッシュレス経費精算は、現金にて清算
タッチレス営業は面談が中心

3.DX推進に向けて

 次に、DX推進をどのように進めてゆけば良いでしょうか。

(1)DX推進体制
 DXは会社全体に関わる課題であることから、部門横断的なプロジェクトチームを組織することが1つの方法です。情報システム部門の他、少なくとも代表的な事業部門、管理部門から各1名をアサインし、”5レス”実現で何をすべきかを各部門から吸い上げ、実効性を担保することが重要です。検討内容は、5レスに直結する、注文はWebでも受け付ける、キャッシュレスシステムを導入するなどのアイデアは早い段階で挙がるものと思いますが、情報がデータ化されることから、マーケティングデータを分析して営業活動に利用したり、顧客満足度を高めるサービス改善に役立てるなど、新たな発想に繋がることが期待されます。

(2)具体的実行計画の策定と実施
 各部門で実施する具体策が挙がったところで、整合をとりながら、例えば3年の具体的行動計画に落とし込みます。その際、具体的対策と実施部門(担当者)、期間ごとのKPI(達成目標)を定めておくことがポイントです。
 そして、計画が経営会議で承認されたならば、いよいよ実施に移すことになります。それ以降は全社プロジェクトとして進捗を管理することが有効です。例えば、各実施部門の進捗状況をまとめDX推進プロジェクトチームからKPIの達成状況を中心に、定期的に経営会議で報告します。

 当事務所では、企業の情報システムに対する総合的なアドバイザの実績があり、経営の観点を含めたDX推進の助言にも対応致します。ご興味のある方は、こちらからお願いします。

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