情報システム部門の役割

 システム障害が発生したら情報システム部門(以下、情シス)に連絡する。そんな時しか意識されない情シスですが、もちろん、役割はそれだけではありません。
 今回は、情報システム部門の役割について記します。

情報システム開発イメージ(著作者:DCStudio/出典:Freepik)

1.情シスの位置づけ

 企業の部門は大きく、事業部門とスタッフ部門に分かれます。
 事業部門には、営業部門や製造部門などが含まれ、業績に直接影響する活動を行いますので、収益や利益など数値での評価が分かりやすい、いわゆるプロフィットセンターです。
 スタッフ部門には、経理部門や人事部門などがあり、企業運営に欠かせない共通業務を担います。収益に関わらず費用が発生する、いわゆるコストセンターです。
 一般に情報システム部門はスタッフ部門に含まれ、社内の情報システム環境を整備・運用する役割を負っています(下図)。企業の規模によっては、総務部門で担当者が兼務していて、体制上の部門は設けていないかも知れません。
 情シスの業務によって、企業は業務効率化が可能になり生産性が向上するだけでなく、より付加価値の高いビジネスへの経営改革も可能にするDXに繋がる戦略的な意味合いも含まれるようになりました。

情シスの位置づけ

2.情シスの業務

(1)業務システムの構築・運用

 基幹システムや会計システムのような業務システムは多数あると思います。部門内の進捗管理のような小規模なシステムは、ノーコードツールなどで担当者で直接開発・運用することができるかも知れませんが、複数部門で活用する大規模な業務システムは情シスで構築・運用することになります。
 大規模な業務システムでは、各業務プロセスと密接に関わりますので関連する業務部門と連携しながら要件を定義し、多くはベースとなる業務システムを選定し、そのソフトウェアベンダにカスタマイズ開発を依頼します。開発の機能を定めるのに数か月、開発・導入に1年程度かかるのは珍しくありません。その間のプロジェクトマネジメントは相当な負荷となりますが、企業側では情シスが中心となることが多いように思います。
 また、運用にあたっては、事業に合わせてシステムの改修に対応したり、サーバのハードウェアやOS、ベースシステムの保守期限に合わせて環境を更新したりせねばなりません。もちろん、障害対応やバックアップも必要です。
 PCの配布や障害対応など、機器の管理もあります。個々のPCにインストールされているソフトを一元管理するシステムを導入することもありますが、もちろん、それだけでは済みません。

(2)情報ネットワークの構築・運用

 業務システムが動作しているのがオンプレミスであれクラウドであれ、情報ネットワークは必須です。1拠点のみの小規模事業者であればシンプルですが、複数拠点や利用者が多い場合は、必要な機能・性能・信頼性などを踏まえて、業者選定やネットワーク設計が必要です。業務システムのように設計・構築を外注することも可能ですが、プログラミングするわけではありませんので、設計は自社で行うことも1つの方法です。
 また、ネットワークは情報インフラにあたりますので、高い信頼性を確保した運用も重要になります。一般に、ネットワーク管理には、障害管理・構成管理・課金管理・性能管理・機密管理があります。
 例えば、ネットワーク構成図を常に最新にしておき、障害発生時に原因追求と回復を迅速にすることやインターネットトラヒックを常に監視して要求性能が不足していないかを定期的に確認することです。

(3)情報セキュリティなど

 システムやネットワークの運用に欠かせないのは情報セキュリティです。ウイルスに感染しないための対策だけでなく、情報漏洩が発生した際の調査や対応、関連規定の策定・運用など多岐に及びます。通信ログを取得できるように設計し、インシデント発生時に原因を特定することが求められます。
 業務システムや情報ネットワーク、情報セキュリティの構築・運用には、情報処理に関する一定の技術を保有している必要があります。一部はベンダの支援を得ることは可能ですが、システム開発の肥大化を避け、自社に適した情報システムを構築するためには主体的に検討・判断できるスキルが望まれ、継続的な自己研磨が必要となります。

3.まとめ

 情シスの業務は専門性があり、業績などの観点では理解しにくい部分ですが、本来、決して楽な業務でないことは理解できたでしょうか。
 また、DXやIT経営を意識するなら、情シスは全社の経営をある程度把握しておき、技術動向に踏まえて積極的に経営改革に関する議論に参加できるようになるべきです。
 人手不足が進行し、生産性向上が必須課題となる昨今、デジタル化を無視して競争に立ち向かうことができる業界は少なくなっています。
 こうした環境を踏まえて、どのように情シス人材を確保・育成するのか、経営者は考えなくてはなりません。

 当事務所では、自らの情報処理スキル獲得と1,000件近い中小企業向け相談対応の経験から、情シス人材の確保・育成や相談内容のほとんどに対応できるサービスを用意しています。
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