プロジェクトマネジメントの重要性
企業活動の中では日常業務に加え、一定期間で特定の成果を上げる「プロジェクト」が数多く発生します。新製品の開発、システムの導入などが典型例です。こうしたプロジェクトを成功に導くには、限られた人材・資金・時間を最適に活用し、計画から完了までを統合的に管理する「プロジェクトマネジメント」の考え方が不可欠です。
1.プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトとは「明確な目的と期限をもつ一時的な活動」を指し、プロジェクトマネジメントはその達成に向けて組織的に調整・管理する仕組みです。活動には大きく以下の要素が含まれます。
- 目標の明確化と計画立案
- 人材・予算・資源の確保と配分
- タスクの洗い出しとスケジュール管理
- 進捗把握とリスク管理
- ステークホルダーとの調整・報告
- 成果物に対する品質・コスト・納期の管理
こうした体系的な手法はPMBOKに代表され、建設業やIT開発で広く普及しています。中でもプロジェクトマネージャ(PM)の責任は重く、全体を俯瞰しつつ現場を動かし、関係者を巻き込みながら成果を出さなければなりません。
PMP資格や情報処理技術者試験の「プロジェクトマネージャ」区分は、その知識やスキルを認定するものです。
2.実際のプロジェクト例
私自身の経験からも、一定規模以上の取り組みではプロジェクトマネジメントの有無が成果を左右することを痛感しています。
大規模プロジェクトとしては、1年以上に及ぶ情報ネットワーク構築案件がありました。全工程をWBS(Work Breakdown Structure)で数十のタスクに細分化し、担当者と工数を割り当て、投入工数とその成果から進捗を数値化するツールを作成し、日々管理しました。限られた人員であったため、私自身が基本設計や関係者との仕様調整を担い、管理と実務を両輪で進める必要がありましたが、何とか想定していた品質・費用・納期を達成することができました。
一方で小規模な例として、資格試験に向けた自己学習をプロジェクト化した経験があります。教材ごとの進捗をExcelに落とし込み、意識して学習者としての自分と管理者(PM)としての自分を分けて進めました。これは小さな試みですが、目標を明確にし進捗を可視化する点で、立派なプロジェクトマネジメントの応用であったと考えています。
これまで、数10のプロジェクトについてPMやメンバとして参画していますが、様々な環境で現場を推し進める上で、プロジェクトマネジメントの考え方は極めて重要であったと認識しています。
3.プロジェクトマネジメントの失敗要因
中小企業が直面するプロジェクトは、補助金を利用したシステム導入や新規事業開発など多様です。しかし、実態として半数以上が期待通りに成果を上げられないとの声もあります。その背景には以下のような要因が見られます。
作業計画の不正確さ | 現実離れしたスケジュールを作成したり、無理な担当割り当てを行い、開始時点から破綻が見えているケース。 |
進捗管理の軽視 | PMが忙しさを理由に管理業務を怠ると、プロジェクト全体の進捗遅れや品質低下につながる場合があります。 |
仕様の未確定 | 仕様が不明確なまま開発を進めると、開発項目の追加・修正が頻発し、コスト増や納期遅延の要因になります。 |
AI活用やデジタル化の流れの中で、中小企業でもシステム開発を伴うプロジェクトが増えています。こうした案件こそ、きちんとした計画とマネジメントが欠かせません。
4.まとめ
残念ながら、中小企業においてプロジェクトマネジメントの重要性が十分に理解されているとは言えません。
経営者に求められるのは、プロジェクトマネジメントを単なる管理手法としてではなく、経営リスクを回避し成果を確実にする「当然の手順」として認識することです。限られたリソースだからこそ、プロジェクトマネジメントを活用し、事業を成功へ導く姿勢が問われます。
当事務所では、「プロジェクトマネージャ」資格とプロジェクトマネジメントの経験を有し、中小企業の開発プロジェクトについてマネジメント支援も行っています。
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