インターネットと情報発信

 タレントの不祥事と地上波TV局の関連が問題視されていますが、その背景には根深いものがありそうです。今回は、社会環境の変化として、インターネットと情報発信について述べます。

地上波TV局のイメージ

1.メディアとインターネット

 何年か前まで一般の方々に向けた情報発信と言えば、地上波TV放送と新聞が中心でしたが、今はインターネットによる情報発信が多くなっています。
 関係する機関を含めた構造は下図のようになっています。

地上波TV局のイメージ

(1) 地上波TV放送・新聞の情報発信

 地上波TV放送は、行政からの優先的な電波割当大手新聞社との資本関係などを受け、長い間、安定して強力な情報発信を行ってきました。ドラマやバラエティー番組のコンテンツ制作を社内で行う形態を維持しているので、芸能界との関わりも大きいと言えます。収益の中心は広告ですが、最近はオンデマンド配信も増加しています。
 新聞メディアは、軽減税率の適用、ニュースソースとして行政と関わりが深い状況にあります。収益の中心は購読料・広告料ですが、新聞の発行部数そのものが減少しており、その傾向が継続するのは確実視されています。
 つまり、一般の方々に向けての情報発信としては、新聞購読者・地上波TV放送の視聴者とも大きく減少しています。

(2) インターネットによる情報発信

 インターネット上には、Webサイト、SNS、動画コンテンツ配信サービスなどがあります。PCやスマホのユーザビリティに加えて、広帯域回線が普及し安定した動画配信が可能となっており、一般の方々に向けた情報発信は急速に拡大しています。
 そして、特定の放送設備も必要なくスマートフォンでも無料で動画配信が可能で、一般の方々と双方向の情報流通が可能な点が重要な特徴となっています。
 収益の面では、Webサイトはプロバイダ等の利用料、検索や表示に伴う広告料、短時間の動画配信や長時間のオリジナルコンテンツ配信では視聴料を得るなど様々な収益モデルがあります。これらは特定の業界や機関とのしがらみもなく、自由度が高く目的に応じた情報発信ができる構造です。
 その象徴として、「インターネットによる広告費」は、2019年から「地上波TVによる広告費」を上回っており、差は開くばかりです。

2.「通信と放送の融合」の歴史

 インターネットを介した放送事業は、実は、国内でも20年以上前のインターネット普及期から議論されていました。動画配信も徐々に行われるようになっていましたが、安定した帯域を確保できる状況ではなく、しばらくはビジネスとして成功していませんでした。
 そうした中で、事業者向け大型ルータの開発に携わっていた私も「IPマルチキャスト※」という技術を活用して事業化を構想していた時期がありました。
 その後、回線帯域が大幅に増加し、YouTubeのような小規模動画配信や、著名な俳優を起用した長時間オリジナルドラマの制作・配信、国内のインターネット放送局も事業化され、相応に視聴されています。
 様々な形でインターネットを介した情報配信は引き続き拡大していくものと考えられます。

  ※IPマルチキャスト:回線帯域を効率的に利用して動画配信を実現する技術。
   特殊な環境を除いて普及は進まなかった。

3.まとめ

 新聞や地上波TV放送は、ある意味、行政による有利な仕組みの中で長い間、優位性に甘んじてきたのかもしれません。一般に、そうした状況が長く続くと、組織のガバナンスが利かなくなります。兵庫県知事選の報道はその象徴的な出来事だったのかもしれません。
 インターネットを介した情報公開により、これから、構造的問題がいくつも顕在化してくる可能性があり、社会に少なからず影響を与えると考えています。

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