中小企業のシステム検討方法
コロナ禍で明らかになった「IT化の遅れ」に対し、経産省の「DXレポート」等でも主張されているように産業界でも改善の動きが広まりました。中小企業におけるデジタル化も例外ではなく、手探りでIT活用を検討している状況が見受けられます。
今回は業務システムの検討方法について紹介します。
1. 企業のデジタル化と検討手順
(1)デジタル化の状況
ビジネス変革を伴うDXに至らずとも、IT活用による生産性向上は中小企業でも避けられない課題となっていることに気付いた経営者は多いはずです。
しかし、業務システムの検討は、業務プロセスの見直しと合わせて実行することで効果が見込まれるため、これまでITを十分活用していなかったり、システムベンダに任せきりであった企業では、①対応できる人材がいない、②ノウハウが蓄積されていないなどで実行に移せない中小企業が多いのが現状と思います。
また、特定のITを導入すれば、あたかも容易に生産性向上を実現できるような誤解を招く広告が目につきます。これを鵜吞みにしてしまった企業では、その実現性や効果、運用面の負荷などの検討を十分に行わなかった結果、「投資に対して、期待した効果が得られない」「運用が難しい」などの問題に直面することも少なくありません。
(2) システム導入前に行うべきこと
ごく一部の業務プロセスしか関連しない場合を除き、複数部門の業務プロセスに関わる販売管理システムのようなケースでは、システムベンダに打診する前に、例えば下表のような検討作業を推奨しています。
1 | 経営課題の整理 | 売上拡大 or 業務効率化、人材活用 or 販売促進 IT環境の確認 |
2 | IT化する業務の選定 | 全体業務フロー作成 改善すべき業務の洗い出し |
3 | 対象業務の分析 | 対象業務の詳細業務フロー作成(As-Is) 業務プロセス(工程)見直しと新フロー図作成(To-Be) |
4 | 実施方法を検討 | 必要な機能を整理(要件定義) クラウドorオンプレミス、実施体制、スケジュール、予算など |
これらは、システム構築以前の検討作業であり、社内の状況を把握している方が検討することが理想です。逆に、この段階からシステムベンダに依頼すると、詳細なヒアリングでも上手く伝わらないこともありますので、業務プロセスに基づく機能が肥大化し、開発費用・運用費用が膨らむ結果となりがちです。
なお、システムベンダに見積もりを依頼するのは、これらの検討が進んだ後に行うことが好ましいタイミングです。
2.助言や支援を得る方法
検討するノウハウが蓄積されておらず、組織として対応が迫られている場合は、システムベンダ以外で、検討作業で助言・支援を得る方法はあります。
(1)公的相談
国や都道府県の支援機関、商工会議所では、公的予算により無料で専門家が相談に応じています。あくまで相談ですので、一定時間内で助言を行うことに限られ、業務プロセスの明確化や特定機能の調査は自主的に行う必要がありますが、前述のような検討作業の内容は助言してもらえます。
(2)公的支援の活用
国や都道府県の支援機関、商工会議所では、専門家派遣や補助金・助成金の制度があります。専門家派遣では、一定の回数で実際に企業に出向いて現場を見て、適切な助言をしてもらえます。その間で、企業で主体的に検討作業を進めることができれば、検討作業の助言や資料のレビューなども支援してもらえます。
(3)民間コンサルタントの活用
公的な専門家派遣では実際の検討作業を依頼することはできませんが、民間のコンサルタントに依頼するのであれば、契約により一部作業を委託することができます。勿論、どのような内容で受託するかはコンサルタントによりますし、費用もまちまちです。
システムベンダに依頼する場合は、自社製品をベースにしたシステム開発・提供を念頭に置いた検討になりがちなのに対し、独立コンサルタントに依頼する場合は企業の立場に立って最適な検討をする点が異なります。検討作業に係る費用や工数は、どちらも相応に発生しますが、その後の開発費用や運用には大きく開きが出ることが考えられます。
3.まとめ
今回は、導入するシステムの検討方法について紹介しました。
システムの検討は自社で行うことが理想ですが、人材やノウハウが不足しているのであれば、中長期の課題として人材の確保・育成を図ることが望ましいと考えます。
その上で、どうしても短期間にシステムを検討したいのであれば、主体的に関与できる組織を定め、人材育成を図りながら、様々な支援を活用して進めることも場合によっては可能です。
当事務所の代表は、複数の公的支援機関に登録しており、公的相談・専門家派遣・民間コンサルタントとしての一連の対応が可能です。
ご興味のある方は、こちらからお願いします。