販売管理システムをノーコードで試作しました
支援先業務のシステム化を想定した販売管理システムをノーコードツールで試作しました。前回はクラウドサービスのツールを利用しましたが、今回はより手軽なPCベースのツールによる体験談を紹介します。
1.作成するシステム
今回は、選定したITツールが本業務の管理システムとして利用可能であることを確認することを目的としています。
(1)要求機能と効果
主な機能は、以下の2点です。
・複数のExcelファイルで運用していた販売データを一元管理
・個々のExcelから出力していた帳票をシステムから出力
狙った効果は、①業務に要する工数が削減されること、②商品ごと・顧客企業ごとの集計による分析が可能になる点で、いわゆる業務効率化です。
(2)依頼内容のヒアリングと業務分析
支援先とはこれまで4回打ち合わせて、経営環境やITリテラシを含め、業務について伺っています。現業務をフロー図(As-Is)に整理し、必要な帳票類を確認し、次に業務プロセスで改善を検討したフロー図(To-Be)を作成し、システム操作を行う業務プロセスをピックアップ、システムの管理項目を定めました。
(3)開発方式の比較検討とツール選定
システム実現方法には、パッケージソフトやクラウド型ノーコードツールなどがあり、どの方法でも機能を満たすことはできそうですが、事業規模や構築費用、運用リソース、使いやすさを加味して比較検討し、今回はPCベースのノーコードツールを採用することとしました。
具体的なノーコードツールの選定は、公開情報を参考に、2,3種類をピックアップして比較検討しました。
2.システム開発作業
実際に行った作業は下表の通りです。
作業項目 | 作業内容 | |
1 | 要件定義 | 支援先と作成した業務フローから要求機能を整理します。 |
2 | 仕様化 | 管理すべき各項目とテーブル構成をまとめます。 |
3 | 設定 | ノーコードツールにてテーブルと各項目を設定します。 |
4 | 検証 | 業務フロー図に沿って基本動作を確認します。 |
5 | 本番環境設定 | 試作のため、ここは実施しません。 |
6 | マニュアル作成 | 試作のため、ここは実施しません。 |
(1)要件定義
今回の要件は、一般的な受発注に則したもので、①受発注情報の管理、②請求書などの帳票管理でした。在庫管理や会計連動などは、現時点では不要でした。
(2)仕様化
販売上の一元管理が中心的な機能ですので、各管理項目とデータベース構造を定めることになります。別な言い方をすれば、Excelのvlookup機能により複数の表をリンクさせて販売データを表現するようなものです。
(3)設定
ノーコードツールにテーブルを定義し、各管理項目を設定してゆきます。
今回は販売情報の管理ですので、基本的に、顧客(住所、氏名など)と商品(商品名、仕入価格など)、販売(売上額、購入者、販売商品明細など)の3つのテーブルを作成し、その間で関連を設定しました。設定した項目は、合計50個程度です。
帳票を作成するには、部分的に集計する必要もありますので、ツール独自の関数を利用して設定します。
(4)検証
各テーブルに仮のデータを設定し、業務フローに照らして動作を確認します。
新規案件データ入力、請求書帳票出力、売上計上などです。
今回は、ツールの機能として十分か、使い勝手として実用的かを見極めることが目的ですので、管理項目や帳票フォーマットの精査は行いませんでした。
(5)本番環境作成・マニュアル策定
実際のシステム構築では、過不足のない管理項目を整え、全帳票テンプレートを用意し、既存の販売データ・顧客データをインポートします。また、運用のためのマニュアル類の作成も必要となります。
今回は、試作のため、この作業は行いませんでした。
3.出来栄えとコストパフォーマンス
要求機能はもちろん満たしていますし、入力フォームでのデータ入力も可能ですので、最低限のユーザビリティ(使いやすさ)は確保できています。
仕様のまとめから設定・検証まで、ラフなレベルですが、8[H]×5日間くらいかかったでしょうか。
あとは、利用しながら、集計や帳票を改善してゆくことで、”かゆいところに手が届く”ようになるでしょう。
これで、ツールのライセンス費用も10万円以下ですので、相当なコストパフォーマンスと言えます。
4.まとめ
今回は十分な機能を実現できるか確認することが目的でしたが、本番環境の開発は企業内で行う必要があります。外注も出来ないことはないと思いますが、せっかくノーコードツールを採用したのに、多額の開発費用・保守費用を負担し、個別の改善も毎度依頼することを考えるとメリットは少ないように思えます。
従って、今回のようなケースでは、先ずは、自社で検討・設定・運用・改善を検討することをお勧めします。
ご興味のある方は、こちらからお願いします。